JNetHack: The Next Generation

3.4.3版について

当ページにあるJNetHack: the Next GenerationはNetHack 3.1.3ベースのものです。 私自身は最近これに手を触れていないのですが、井出健智氏により 3.4.3対応版の 開発が行われております。

入手について

JNetHack: the Next Generationは、JNetHack 1.0.3に対するパッチとして 配布されています。オリジナルのNetHack: the Next Generationも入手できま すが、これは、日本語版作成には必要ありません。

JNetHack: the Next Generation って何?

Roguelikeゲームの雄であるNetHackですが、本家の純正(vanilla)NetHackは バージョン 3.1.3 以降、なかなかバージョンアップされませんでした。 (現在は3.4.3がリリースされています) そんな中で、業を煮やした(?)NetHackerたちが、 いくつかの変形版を発表しています。 Sebastian Klein氏によるNetHack: the Next Generationも、そんな変形版の一つです。

一方、国内では、沼田一成氏らにより、 NetHack 3.1.3に対する日本語化プロジェクト が進行、NetHackの日本国内普及に大きく貢献しています。

現在はNetHack 3.2.2に対するJNetHack 1.1.2が最新版です。

このJNetHackの日本語化ノウハウをNetHack: the Next Generationに応用 したものが、JNetHack: the Next Generationというわけです。

オリジナルNetHackとどう違うの?

JNetHack: the Next Generationには、以下のような追加フィーチャーがあ ります。オリジナルに比べてなかなか派手なプレイが楽しめますが、その代り、 若干難易度が下っています。

  • ダグラス・アダムスのSF「銀河ヒッチハイク・ガイド(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)」に登場するモンスターやアイテム。
  • 新クラス・ギーク(Geek)、およびそのクエスト。
  • 特殊レベルの追加。(鍛冶場・殺人ハイスクール・コンピュータルーム・鍵の間・竜王のねぐら・ヒッチハイクレベル
  • モンスター(58種)の追加。
    • ダグラス・アダムスの世界のモンスター
    • オリジナルローグの特殊モンスター
    • コンピュータルームのモンスター
    • Geekのクエストモンスター
    • その他のモンスター
  • アーティファクト(8種)とアイテム(38種)の追加。
  • 好みの能力値でスタートできる。
  • 占いクッキーの真偽が?(ストームブリンガーで渦を?)
  • 錬金術

などなど。

新クラス・ギーク(Geek)

ギークは、「ハッカーズ大辞典」に載っているハッカーと、 NetHackのプレイヤーを一緒くたにしたものです。

ハッカー(Hacker)というクラス名ではないのは、薬師(Healer)の強固な反対に遭ったからです。

属性

中立

能力値

10+30%10+15%10+15%8+10%9+20%7+10%

資質

資質レベル
毒への耐性1
衝撃への耐性1
瞬間移動制御8
警告15

初期装備

  • 祝福された +1 ライトサーベル(electric sword)
  • 1..7個のIC
  • +1 タイピングの小手(gauntlets of typing)
  • 4本のジョルトコーラ(potions of Jolt Cola)
  • 2つのハッカーの糧食(Hacker's Foods)
  • フロッピーディスク(a pack of floppies)

クエスト

クエストの指導者(Leader)

開発チーム(The DevTeam)

クエストの敵(Nemesis)

ビル・ゲイツ(Bill Gates)

クエストアーティファクト

ネットハックのソース(The NetHack Sources)

新レベル

鍛冶場(The Forge)

刀鍛冶の Duri がいます。 (Duriの名前は、Sonia Orin Lyrisの短編blades(Quanta Magazine、1989年12月から採られています)

高くつきますが、銘のある武器を鍛えてくれます。

殺人ハイスクール(The School)

作者の(現在を含む:-)学生時代の思い出です。教官の名前や性格はそのママです。

このレベルがゲヘナにあるのは偶然ではありません。

コンピュータルーム(Computer Level)

危険なコンピュータがたくさん存在します。

以下の品はこのレベルでしか発見できず、階段の昇降によって消えてしまいます。

  • 適時バックアップの指輪(ring of timely backup)
  • ルートパスワード検知の巻物(scroll of root pwd detection)
  • データ保存の魔除け(amulet of data storage)
  • バグ出しの杖(wand of bugging)

バグ出しの杖(wand of bugging)はバグ(bug)やハイゼンバグ(heisenbug)を造り出します。

他の品は愉快なメッセージを表示するだけです。

鍵の間(Key Level)

レプラコーンとニンフに満ちています。全て起きており、あなたの持ち物 を盗もうと待ち構えています。ニンフの女王(nymph queen)を斃すことができ れば、アクセスキー(Key Of Access)を入手できるでしょう。

竜王のねぐら(Dragon Level)

特別な鱗を持った竜王(the Dragon Lord)がいます。

ヒッチハイクレベル(The Hitchhiker's Level)

ダグラス・ノエル・アダムスの作品に敬意を表して、このレベルは作られました。

新モンスター

58種類のモンスターが追加されています。

ダグラス・アダムスの世界のモンスター

  • がつがつむしゃむしゃトラアル獣(Ravenous Bugblatter Beast Of Traal)
  • 超微細宇宙船(microscopic space fleet)
  • アルゴルの太陽虎(algolian suntiger)
  • ディープ・ソート(Deep Thought)
  • エディー(Eddie)
  • ダグラス・アダムス(Douglas Adams)
  • ヴォゴン人(vogon)
  • ヴォゴン人の貴族(vogon lord)
  • プロステトニック・ヴォゴン・イェルツ(Prostetnik Vogon Jeltz)
  • マーヴィン(Marvin)
  • ザフォド・ビーブルブロックス(Zaphod Breeblebrox)
  • クリーピング42(creeping 42)
  • フォード・プリーフェクト(Ford Prefect)
  • アーサー・デント(Arthur Dent)
  • プロッサー氏(Mr. Prosser)
  • "#babelfish">バベル魚(babelfish)

オリジナルローグに登場するモンスター

  • 水ごけの怪物(aquator)
  • ケンタウロス(centaur)
  • ドラゴン(dragon)
  • 大うずら(emu)
  • はえとりぐさ(venus flytrap)
  • 翼ライオン(griffin)
  • 氷の怪物(ice monster)
  • 大はやぶさ(kestrel)
  • ニンフ(nymph)
  • 幽霊(phantom)
  • 大つのじか(quagga)
  • がらがらへび(rattlesnake)
  • 物まねの怪物(xeroc)
  • ゾンビ(zombie)

コンピュータルームのモンスター

  • バグ(bug)
  • ハイゼンバグ(heisenbug)
  • PDP-11
  • PDP-9
  • VAX
  • クレイ(cray)
  • ニュースデーモン(news daemon)
  • プリンタデーモン(printer daemon)
  • UNIX カーネル(UNIX Kernel)

Geek のクエストモンスター

  • ギーク(geek)
  • 開発チーム(The DevTeam)
  • ビル・ゲイツ(Bill Gates)
  • ハッカー(hacker)

その他のモンスター

  • シュレディンガーの猫(Schrödinger's Cat)
  • 長老レプラコーン(leprechaun elder)
  • レプラコーンの王(leprechaun king)
  • ニンフの女王(nymph queen)
  • 巨大ムーマク(giant mumak)
  • 若いユニコーン(young unicorn)
  • いにしえの五色竜(ancient multi-hued dragon)
  • 若いリッチ(baby lich)
  • 小イモリ(deminewt)
  • 大イモリ(masternewt)
  • 竜王(Dragon Lord)
  • 刀鍛冶(blacksmith)
  • 生徒(pupil)
  • 教官(teacher)
  • 校長(principal)
  • お散歩ディスクドライブ(walking disk drive)

新アーティファクト

8種類のアーティファクトが追加されています。とくにアイテムの識別がで きるネットハックのソースは垂涎モノでしょう。

名前タイプ#invokeダメージ属性クラス
ムーマクベーン(Mumakbane)長剣火(対ムーマク)中立
ワームバイター(Wormbiter)クリスナイフ物理的(対ワーム)中立
ショッカー(Shocker)ライトサーベル電撃中立
竜王の鱗(Scales Of The Dragon Lord)灰色ドラゴンの鱗鎧ブレス混沌
焦げた蛾のリレー(Burned Moth Relay)リレー
力の杖(Wand Of Might)願いの杖
アクセスキー(The Key Of Access)門を造る
ネットハックのソース(The NetHack Sources)フロッピーディスク識別中立ギーク

新アイテム

38種類のアイテムが追加されています。

ライトサーベル(electric sword)
とくに説明不要。残念ながら錆びます。
アルゴルの太陽虎の歯(tooth of an algolian suntiger)
きわめて良釈な武器。
タイピングの小手(gauntlets of typing)
とくに説明不要。
健康の指輪(ring of health)
耐久力(constitution)を増します。
適時バックアップの指輪(ring of timely backup)
コンピュータルームを参照。
「待った」の魔除け(amulet of second chance)
命の魔除けと似ていますが、HP は完全には回復せず、最後の一撃を

喰らう前の状態までしか戻りません。

データ保存の魔除け(amulet of data storage)
コンピュータルームを参照。
シュレディンガーの箱(Schrödinger's Box)

ラジウムの瓶(potion of radium)と、(生きている猫と青酸の瓶(potion of cyanide)|猫の死体)のどちらかのどちらかが入っています。両者のどちらであるかは、箱を開けるまで決定されません。

消化する鞄(bag of digestion)
中身を食べてしまいます。
銀河ヒッチハイク・ガイド(Hitchhiker's Guide To The Galaxy)
README.DNA を参照。(未訳 _o_)
ダイオード(diode)、トランジスタ(transistor)、IC
README.DNA を参照。
フロッピーディスク(pack of floppies)
何が入っているかは謎です。中身がウィンドウズ95で、あなたがギークなら、使うと混乱してしまうでしょう。
ゴドメータ
祝福されているなら、祈りが解禁されているかどうかがわかります。さもなければ、解禁までの間隔が延びてしまいます。
リレー(relay)
Artifact prototype
空き瓶(bottle)、実験器具(chemistry set)
錬金術を参照。
ハッカーの糧食(Hacker's Food)
ギークの食料です。
活力の薬(potion of extreme power)
HPを(最大HPともに) rn2(10)(=0〜9)増やします。
完全回復の薬(potion of recovry)
最大HPまで回復します。
無敵の薬(potion of invulnerability)
無敵になります。
英雄の薬(potion of heroism)
一時的にいくつかの資釈を得て、さらに無敵状態になります。
青酸の瓶(potion of cyanide)
どくいりきけん。飲んだら死ぬで
ラジウムの瓶(potion of radium)
病気になります。
ジョルトコーラ(potion of Jolt Cola)
HPを5増やします。(上限は最大HP)
汎銀河ウガイ薬バクダン(potion of Pan Galactic Gargle Blaster)
自分で体験しましょう:-)
大量殺戮の巻物(scroll of mass murder)
虐殺の巻物と同様に、今存在するある種の怪物を全て殺しますが、新しく生まれてくるのを妨げるものではありません。
虐殺取消しの巻物(scroll of undo genocide)
虐殺された種が生まれてこれるようにします。
逆識別の巻物(scroll of reverse identify)
この巻物を読むと、何を識別したいかを尋ねられるので、loadstoneとかwand of wishingとか、はたまたsmoky potionのように入力すると、それが何なのか答えてくれます。
聖別の巻物(scroll of consecration)
祭壇を造ります。
ルートパスワード検知の巻物(scroll of root pwd detection)
コンピュータルームを参照。
フィンガーの魔法書(spellbook of finger)
探査する杖(wand of probing)のようなものです。
錬金術の書(spellbook of chemistry)
錬金術を参照。
酸の杖(wand of acid)
酸を噴射します。
吸収の杖(wand of draining)
モンスターのHPを半分にしますが、それと同じだけ自分のHPも吸い取られてしまいます。
ふしぎな杖(wand of wonder)
願いの杖以外のランダムな杖の効果を表します。
バグ出しの杖(wand of bugging)
コンピュータルームを参照。

錬金術

白紙の巻物・魔法書と魔法のマーカを組み合わせて巻物や魔法書が作れる ように、薬を作る方法ができました。これを使うには以下の条件が必要です。

錬金術の書(spellbook of chemistry)を読む。
一度で十分。他の呪文のように使っても摩滅することはありません(記憶喪失は別)。
実験器具(chemistry set)を持っている。
巻物に対する魔法のマーカの役目を果たします。使うたびに消費されるので、使用回数には制限があります。消費量は薬の値段によります。
新しくできた薬を入れるための空瓶(bottle)を持っている。
白紙の巻物・魔法書に相当します。
作りたい薬を識別していること。
知らなくても、運が良ければできちゃいますが。

作った薬は、持ち物欄では「自家製の(selfmade)」という印がつきます。 (同様に、巻物や魔法書や缶にも) 運によりますが、自家製の薬を飲んだ場合、 悪いこと(作成時のミスによって毒になっている)が起ることがあります。

参考文献

※下記の銀河ヒッチハイク・ガイドの和訳は新潮社版によります。

用語解説

バベル魚(babelfish)

「バベル魚−」と「銀河ヒッチハイク・ガイド」が穏やかな声で言っ た。「ヒルのような小さな黄色い魚で、おそらく宇宙一奇妙な存在である。 自分を耳の中に入れている宿主だけではなく、自分の周囲に存在する者の 脳波エネルギーを受けとって、それを常食とする。脳波エネルギーから無 意識下の精神波をすべて吸収し、栄養とする。それからバベル魚は宿主の 脳にテレパシーの母体とでもいうべきものを分泌する。この母体は宿主の 意識的な思考波と脳の言語中枢から発せられる神経信号とを組みあわせて 造られたものである。これすなわち、耳の中にバベル魚を入れれば、どん な言語であっても即座に理解できるというわけだ。相手のしゃべっている 言語パターンは脳波母体に翻訳され、それがバベル魚によって宿主の心に 送り込まれるのである。

[...]

また、バベル魚は、さまざまな種族や文明間の意思の疎通を妨げてい るあらゆる障害を効果的に取り去ったがために、生命の歴史の中でも特筆 すべき血なまぐさい戦争をいくつもひきおこしてきた」

[ The Hitchhiker's Guide To The Galaxy, by Douglas Adams / 銀河ヒッチハイク・ガイド, 風見潤訳 ]

バグ(bug)

n. プログラムやハードウェアの意図しない困った特性で、とくに、動 作不良の原因となるもの。機能(feature)の反意語。<例:「このエディ タにはバグがあり、内容を逆向きに書き出す。」「Fredはいいやつだ が、少しバグがある」 (つまり人格に2〜3問題があるという意味)

[ The Jargon File, version 3.0.0 / ハッカーズ大辞典, 福崎俊博訳 ]

クリーピング42(creeping 42)

究極の疑問(それが何なのか、誰ひとり知る者はない)の答え(GoogleJ:人生、宇宙、すべての答え)が転生した ものである。これの死体を食べると、洞察に満ちたその答えの片鱗を垣間見 ることができ、人生の大いなる糧とすることができる。しかし、これによる 衝撃は一時的に視野をぼやけたものにしてしまうだろう。

クレイ(Cray)

n. 1. (正しくは大文字で)クレイリサーチ社が設計したスーパーコン ピュータシリーズのどれか。2. 任意のスーパーコンピュータ。3. 正準 (canonical)ナンバークランチ(number-crunching)マシン。

[ The Jargon File, version 3.0.0 / ハッカーズ大辞典, 福崎俊博訳 ]

ディープ・ソート(Deep Thought)

「ディープ・ソートのそばで待つ諸君!」男は大声をあげた。「この宇 宙でもっとも偉大にしてもっとも誠実なる関心をひきおこした哲学者ヴルー ムフォンデルとマジクサイズの栄えある子孫たちよ...待機の時は終っ た!」

[...]

「七百五十万年にわたり、我々は今日というすばらしき希望に満ちた 日を待ち続けた」演壇の男が叫んだ。「答えの日が来たのだ!」

[...]

「もうじきだな」

ひとりが言った。と、その男の首のそばの空中に文字があらわれたの で、アーサーはびっくりした。文字は、"ルーンクォール"とあり、一、二 度またたくと消えた。これは何だと思っているうちに、もうひとりが口を 開き、"フォークフ"という文字が首のそばにあらわれた。

「七万五千世代前、御先祖さまがこのプログラムを動作させた」と、 その男は言った。「この七百五十万年間で我々がコンピュータの声を聞く 最初の人間になるわけだな」

「胸がわくわくするよ、フォークフ」

最初の男が言い、例の文字はいわば字幕なのだとアーサーは思い至っ た。

「まもなく答えを聞くんだな」フォークフが言った。「生命と...!」

「宇宙と...!」ルーンクォールが言った。「万物の答を!」

「シーッ」ルーンクォールがわずかに手をあげた。「ディープ・ソー トがしゃべる準備をはじめたようだぞ」

しばらく待ち設けるような沈黙。制御装置の前面パネルにゆっくりと 生命が吹き込まれた。ランプが試験的にまたたき、きちんとしたパターン におちついた。低くやわらかなブーンという音がスピーカーから洩れはじ めた。

「おはよう」ついにディープ・ソートが言った。

「アー...おはよう、ディープ・ソートよ」ルーンクォールが不安 そうに言った。「あれはわかったかね...つまり...」

「答えですか?」ディープ・ソートが堂々とした声で応じた。

「ええ、わかりましたよ」

男たちは期待に武者ぶるいした。この七百五十万年は無駄ではなかっ たのだ。

「本物の答えだろうね?」フォークフがかすれ声で言った。

「本物の答えです」ディープ・ソートがうけあった。

「万物の答えだね? 生命と宇宙と万物についての究極の疑問の答えだ ね?」

「はい」

ふたりはこの瞬間に対処する訓練をうけていた。ふたりのこれまでの 人生はこのときのためのものだった。ふたりは赤子のとき、答の発表に立 ち合うべく選ばれた人間であった。しかし、ふたりは興奮した子供のよう に息を荒くし、もぞもぞと落ちつきなく身体をうごめかせていた。

「その答えを我々に教えてくれるね?」ルーンクォールが訊いた。

「はい」

「いま?」

「いまです」

ふたりはかさかさになった唇をなめた。

「だが、きっと気に入らないでしょうね」とディープ・ソートが言っ た。

「そんなことはどうでもいい!」フォークフが言った。「我々は答えを 知らねばならないのだ! いますぐに!」

「いますぐ?」ディープ・ソートが訊ねた。

「そうだ! いますぐ...」

「わかりました」

コンピュータはそう言い、黙りこくった。ふたりはそわそわした。緊 張は耐えがたいほどだった。

「きっと気に入らないと思いますよ」ディープ・ソートが言った。

「教えてくれ」

「よろしい」ディープソートが言った。「生命と...」

「フム...!」

「宇宙と...」

「フム...!」

「万物についての究極の疑問の答は...」

「フム...!」

「答えは...」ディープソートは言葉を切った。

「フム...!」

「答えは...」

「フムフム...!!」

「42です」感情をこめて言い、沈黙した。

[ The Hitchhiker's Guide To The Galaxy, by Douglas Adams / 銀河ヒッチハイク・ガイド, 風見潤訳 ]

ダグラス・アダムス(Douglas Adams)

ホンモノのダグラス・アダムスへ: この文をお読みになったとしても、 あなたや、あなたのキャラクターたちがこのゲームでどう表されているかに ついて、不快にならないよう願います。元はといえばあなた、そう'''あな た'''がこの作品のオリジナルなんですから。

勝手ながら、電子メールでのご意見、非難、脅迫はブラッ クホール行きとなっております。当方、火への耐性がありますので、火の粉 をふりかけても無駄です。

エディー(Eddie)

「はい、みなさん! この船のコンピュータ、エディです。わたしはい まやる気になってますよ。どんなプログラムを入れられたって、ちゃんと やりとげてごらんにいれます」

アーサーは訊ねるようにトリリアンを見た。彼女はブリッジに入るよ う、でも黙っているようにと身振りで示した。

「コンピュータ」ザフォドが言った。「現在の軌道をもう一度教えて くれ」

「よろしいですとも」コンピュータはぺちゃくちゃとしゃべりまくっ た。「本船はただいま伝説の惑星マグラシアの上空300マイルのところを 周回しています」

「それがほんとだとは証明できまい」フォードが言った。

「ぼくの体重にかけて、このコンピュータは信用できない」

「体重でしたら、すぐにお教えできます」コンピュータがテープをは きだしながら言った。「よろしかったら、小数点以下十位まで計算してさ しあげますが」

[ The Hitchhiker's Guide To The Galaxy, by Douglas Adams / 銀河ヒッチハイク・ガイド, 風見潤訳 ]

フォード・プリーフェクト(Ford Perfect/Ford Prefect)

まったくなしと言えば、猿の末裔たるアーサー・デントにはひとりの 親友がいる。その男が実は猿の末裔ではなく、常々口にしているがごとく ギルフォード生れでもなく、ベテルギウスをめぐる小さな惑星の出身であ るなどという疑惑をアーサーが抱いているかと申せば、これまたまっ たくなしであった。不思議な暗合だ。

アーサーはそんなふうに疑ったことなど一度もなかった。

その親友は、地球の数え方で15年ばかり前に初めて地球にやって来て、 地球社会にとけこもうと猛勉強をかさね − かなりの成功をおさめた。た とえば、彼はこの15年間、役のつかない役者のふりをしてすごした。これ はなかなかもっともらしかった。

とはいえ、予備調査をちょっとケチッたため、ひとつ軽率なしくじり をやった。収集した情報にもとづき、ごく目立たない名前として、フォー ド・プリーフェクトというのを選んでしまったのだ。

[ The Hitchhiker's Guide To The Galaxy, by Douglas Adams / 銀河ヒッチハイク・ガイド, 風見潤訳 ]

ハイゼンバグ(heisenbug)

[量子物理学の Heisenburg の不確定性原理から]

n. 突きとめたり分離したりしようとすると、消失したりふるまいを変化 させるバグ(これはそれほど非現実的な用語ではない。デバッガを使うと プログラムの動作環境が大幅に変化して、初期化されていないメモリの値 を使うなどのバグっぽいコードの動作が大きく変る場合があるからだ)。 反意語はBohr bug。mandelbug、shroedinbugも参照。Cでは、10個のハイ ゼンバグ(heisenbug)のうちの9個は自動変数の初期化し忘れによって起こ り、コアで阿波踊り(fandango on core)現象、(とくにmallocアリーナ (arena)の破壊による誤動作)や、スタックぶち壊し(smash the stack)エ ラーが発生する。

[ The Jargon File, version 3.0.0 / ハッカーズ大辞典, 福崎俊博訳 ]

PDP-*

[Programmed Data Pocessor model 10]

n. タイムシェアリングを実現したマシン。これがハッカーの言い伝えの 中で大きな位置を占めているように感じられるのは、1970年代の中頃に、 MIT AIラボやスタンフォード大学やCMUをはじめとする数多くの大学のコ ンピュータ施設や研究所にこのマシンが導入されたため。一部の命令セッ トは、いまだにその右に出るものがないと考えられている(その代表がビッ トフィールド命令)。PDP-10は、やがてVAXマシン(PDP-11の末裔)に座を逐 われることになる。DECが10とVAXの製品ラインが互いに競合しているのに 気づいて、自社のソフトウェア開発パワーを利益率の高いVAXに集約しよ うと決めたからだ。このマシンが最終的にDECの製品ラインから外された のは、有望な新機種の製造を目指したDECのJupiterプロジェクトが失敗に 終ったあとの1983年のことだった(クローンを売ろうとした他社の企ても 水泡に帰した。FoonlyとMarsを参照)。この出来事は、オリジナルの Jargon Fileを生んだ技術文化とITSの終焉を告げるものだったが、1991年 の中頃の時点では、PDP-10で産湯につかったということが、すでにハッカー の間で栄誉あるベテランの勲章となっている。TOPS-10、ITS、AOS、BLT、 DDT、DPB、EXCH、HAKMEM、JFCL、LDB、pop、push、Appendix Aを参照。

[ The Jargon File, version 3.0.0 / ハッカーズ大辞典, 福崎俊博訳 ]

プロステトニック・ヴォゴン・イェルツ(Prostetnik Vogon Jeltz)

プロステトニック・ヴォゴン・イェルツは、見ていて楽しくなるよう な姿はしていなかった。仲間のヴォゴン人にとってさえ、そうである。豚 のように狭い額から、まん丸い鼻が高く突きだしている。濃緑色のゴムを 思わせる面の皮はとても分厚くて、ヴォゴンの政治行政の世界を泳ぎまわ るのに非常に便利だ。もちろん防水性も完璧で、1000フィートの深海でも なんの苦もなく生きていくことが可能だった。

といっても、イェルツが海水浴に出かけたことがある、というわけではな い。ぎっしり詰ったスケジュールでは、海水浴など夢のまた夢だ。

[...]

プロステトニック・ヴォゴン・イェルツは実に不愉快きわまるという点で は、まったく典型的なヴォゴン人であった。そしてまた彼はヒッチハイカー が大嫌いだった。

[ The Hitchhiker's Guide To The Galaxy, by Douglas Adams / 銀河ヒッチハイク・ガイド, 風見潤訳 ]

がつがつむしゃむしゃトラアル獣(Ravenous Bugblatter Beast Of Traal)

恒星間を旅するヒッチハイカーの持ち物のなかでも、タオルはとりわ け役に立つ品物です。まず、実用的な価値 −ジャグラン・ベータ星の冷 たい月に照らされて旅をするときは、タオルにくるまって暖をとることが できます。サントラギヌス第5惑星のきらきら輝く大理石の砂浜では、タ オルの上に寝そべって、人を酔わせる潮風を心ゆくまで吸いこみましょう。 砂漠惑星カクラフーンの赤く輝く星々のもとでは、タオルをかけて眠りま す。あの有名な大河、モス河くだりでは、タオルを筏の帆にすることもで きます。トラアルには虫のような鳴き声の貪欲な獣が棲息していますが、 その眼を避けたり(というのは、こいつはいやになるほどマヌケな獣で、 あなたがこいつを見ることができなければ、こいつもあなたを見ることが できないことになっているのです − とまあ、きわめつけのバカなのです が、貪欲なこともこのうえありません)、悪臭を避けたりするには、タオ ルを顔に巻きつけます。遭難したときはタオルを振って合図できますし、 もちろん、まだきれいだなと思ったら、身体を拭いてもいいのです。

[ The Hitchhiker's Guide To The Galaxy, by Douglas Adams / 銀河ヒッチハイク・ガイド, 風見潤訳 ]

*UNIX*

[ 作者によれば「Multicsをちょっともじったもの」 ]

n. ベル研がMulticsプロジェクトから撤退したのち、1969年にKen Thompsonが開発した対話的タイムシェアリングシステム。もともとは、ガ ラクタ同然のPDP-7でゲームをプレイするために開発された。Cの発明者 Dennis RitchieもUNIXの共作者とされている。UNIXの歴史に転換期が訪れ たのは、それがほとんどCだけで書き直された1972〜1974年のことだ。こ れによってUNIXは、ソースレベルで移植性のある最初のOSとなった。 UNIXはその後多くの人々の手によって変更や拡張を施され、他に類を見な いほど柔軟で開発者フレンドリな環境となった。1991年までに、UNIXは世 界でもっとも広く使われているマルチユーザー汎用オペレーティングシス テムになっている。これを、業界の妨害に対するハッカー王国の史上もっ とも重要な勝利とみなす人が多い(ただし、UNIX weenieとUNIX conspiracyの項に出ているこれと正反対の見解を参照)。Version 7、 BSD、USGUNIXを参照。

[ The Jargon File, version 3.0.0 / ハッカーズ大辞典, 福崎俊博訳 ]

VAX

[Virtual Address eXtension(仮想アドレス拡張)から ]

n. 1. おそらく直接の前身にあたるPDP-11を除けば、業界史上もっとも成 功したミニコンピュータデザイン。1978年にリリースされてから1986年頃 以降キラーマイクロ(killer micro)に蝕されるまで、VAXはおそらくハッ カーの一番お気に入りのマシンだった(とくに4.2 BSD UNIX(BSDを参照)が リリースされた1982年以降は)。大規模でアセンブラプログラマフレンド リな命令セットでとりわけ名高いが、RISC革命以後はこの資産が負債と化 した。

[ The Jargon File, version 3.0.0 / ハッカーズ大辞典, 福崎俊博訳 ]

ヴォゴン星人、ヴォゴン星人の貴族(vogon/vogon lord)

[...]

というのも、数兆年前、ヴォゴン人が初めてヴォグ星の穏やかな原始 の海から這いだし、足跡ひとつない浜辺に横たわって、荒い息をついてい たとき...つまり、若く明るいヴォグ太陽の光が彼らのうえに初めて降 りそそいだときのこと、進化の力が彼らに働きかけるのをあっ さりとやめ、気持ち悪い奴らだなあと脇に抛りだし、こいつは不幸なきた ねえ失敗だよと、きれいさっぱり忘れてしまったからであった。ヴォゴン 人はもうそれ以上、二度と進化しなかった − 生きのびるべきではない種 族であった。

[...]

一方、ヴォグ惑星の自然はたっぷり時間をかけて、初期のしくじりを 償いつつあった。まずは、きらきら輝く宝石をちりばめたハシリガニを生 みだしたのである。ヴォゴン人は、鉄の小槌でそのカニの殻を割り、肉を 食べる。また、思わずドキドキしてくるような色をした細く背の高い木も 生れた。ヴォゴン人はこれを切り倒して、カニの肉を焼く薪に利用した。 絹のような毛皮とうるんだ瞳を持ったガゼルのような優美な生物も生れた が、ヴォゴン人はこれを捕えて、その上にまたがるのだった。その背骨は 簡単に折れてしまうので、輸送の役には立たなかったが、ヴォゴン人はと にかくしゃにむにその背に乗っかるのである。

[ The Hitchhiker's Guide To The Galaxy, by Douglas Adams / 銀河ヒッチハイク・ガイド, 風見潤訳 ]

お散歩ディスクドライブ(walking disk drive)

n. 磁気ディスクドライブがばかでかくて扱いづらい洗濯機(washing machine)だった時代にときどき起こった故障モード。そうした古い恐竜 (dinosaur)装置の角運動量はきわめて大きい。だから、スピンドルの位置 が狂ったりベアリングが摩滅したりしたところに床面に対する固着−滑動 の相互作用が加わると、ドライブが部屋の別のコーナーに向かって一度に 数ミリメートルずつガタガタ動いて、部屋の中をお散歩 (walk)し始めることがあった。ドライブがコンピュータルームの1つ しかないドアに向かって歩いて行って、ドアを押して閉めたという伝説も ある。まわりのスタッフは、ドライブがドアまで歩いて行けるように壁に 穴を開けてやらなければならなかったという。この歩行現象が、特定のパ ターンのドライブアクセスによって引き起こされるケースもあった(ディ スクの端から端までに高速なシークをかけて、次に逆方向に低速なシーク をかける)。古参のハッカーの中には、個々の機種のドライブを歩行させ るディスクアクセスパターンの起こし方を分析して、ディスクドライブレー スを開催した連中もいた。

[ The Jargon File, version 3.0.0 / ハッカーズ大辞典, 福崎俊博訳 ]